クレームは貿易取引においてトラブルが発生した時に行うもので、損害賠償ともいう。法律上ないし貿易取引上から正確に認められるクレームとは、「契約の一方の当事者が、契約違反をなした他の当事者に対し、自らの権利の回復や損害賠償を請求すること」と定義づけられる。契約する際に法律と国際商習慣に基づいたクレーム条件を契約書に書き入れるべきである。一般に損失を受け、クレームを提起することは「求償」、クレームを処理し損失を補填することは｢賠償｣という。

（一）クレームの種類

クレームとは、運送中に貨物の破損が生じたり、輸出者が契約条件と異なる品質のものを出荷したりすることなどにより発生した損害について、輸入者が損害賠償請求することである。クレームはその内容によって、運送クレーム、保険クレームと貿易クレームの三つに分けられる。

1．運送上の事故による運送人に対するクレーム

このクレームはさらに、運送クレームと保険クレームに類別される。

（1）運送クレーム（Transportation Claim）

運送中に生じた貨物の滅失・損傷や延着などの原因により生じた損害について運送人に対してクレームをつけるが、船会社などは船荷証券に多くの免責事項を記載しているので損害求償の範囲は限られる。

（2）保険クレーム（Insurance Claim）

一般に輸出者ないし輸入者は貨物に保険をかけるので、どの範囲まで損害がカバーされるか、保険条件に基づいて保険会社に求償する。

2.海外取引先との商品等の貿易クレーム

貿易クレームの原因は、品質不良、品質相違、商品違い、包装不備、規格相違、船積遅延、量目不足、法規違反の船積などがある。クレームの相手には以下のものが考えられる。

（1）契約の当事者

（2）銀行・外国政府など

（3）第三者（特許侵害や製造物責任などの場合）(www.daowen.com)

3.貿易クレームの原因

貿易クレームの発生原因として、一般には次の事柄が考えられる。①言葉の相違、②商慣習や法制上の相違、③信用調査の不備、④貿易に関する知識の欠如、⑤契約条件の不明確、⑥手続き上の不注意、⑦輸送中の危険、⑧相場の変動、⑨国際商慣習と国際条約に対する無知など。

（二）貿易クレームの解決方法

貿易クレームは通常、和解（話し合い）、調停、仲裁、訴訟の四つの方法により解決される。貿易売買契約上のクレームであれば、一般に当事者間で交渉し、裁判に至らず問題解決をはかる和解が最も多いようである。それでも解決できなければ、第三者による調停、仲裁、訴訟等の方法がある。

1.和解（Compromise）

契約段階で調停や仲裁について取り決めをしていなかった場合、両当事者間の話合いで妥協（Amicable Settlement）に至ることをいう。現実のクレームの大半、特に取引金額が少額の場合は、和解により解決されている。

2.調停（Conciliation）

両当事者が公正な第三者を調停人として選び、調停人の示す調停案に合意することによりクレームを解決する方法である。調停案は強制力がないので、調停案を拒否しても差し支えない。

3.仲裁（Arbitration）

一般に裁判と仲裁は二者択一である。仲裁に持ち込むには相手の合意が必要であるが、仲裁人（Arbitrator）による仲裁裁定（Award）は、ニューヨーク条約や2国間通商協定等に基づいて強制力がある。

4.訴訟（Lawsuit）

訴訟は当事者の片方が一方的に提起できる解決方法であるが、自国で提訴するか、相手国においてか、準拠法はどうするかなどの問題があり、時間と費用もかかるので、あまり利用されない。